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天気

広島市の局地的豪雨災害 直前まで情報がなかった

まさか広島に帰省中このような豪雨になるとは・・・ただただ驚くばかりです。

私は被害の出た時間、広島市の西隣廿日市市の実家にいました。廿日市市でも窓を閉めないと寝れないくらいの激しい雷雨となりましたが雨量はそこまで多くはなく周辺に被害はありませんでした。

雨のピークは2度 最初の雨のときに予測できていれば・・・

報道では豪雨災害の直接的な原因になった20日未明から明け方に広島市北部を襲った豪雨について詳しく解説されていますが、その約6時間前の19日午後9時半頃に今回被害の出た広島市北部地域から約10kmほど南の広島市中心部でも豪雨になっていました。

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午後9時25分のレーダー画像です。広島市中心部では既に激しい雨になっていますが、大雨洪水警報が広島市に発表されたのは直後の午後9時26分です。そして、午後10時頃には広島駅周辺や市内中心部の道路が浸水しているという情報がTwitterなどで一気に広まりました。警報発表から僅か30分の出来事です。広島市中区では午後10時までの1時間に41.5mmの激しい雨を観測しました。一方、今回被害が出た広島市北部地域ではまだ大雨にはなっていないこともわかります。

「広島県に大雨の恐れがある」という情報が気象台から最初に出されたのは22時半頃。しかし、この頃には雨の降り方が一旦落ち着いていて23時33分には洪水警報が解除されています。

再び雨雲が発達して危険な状態になり始めたのは20日の午前1時頃からです。1時15分に大雨警報より土砂災害の危険が差し迫っていることを伝える「土砂災害警戒情報」が発表され、1時21分に再び洪水警報が発表されました。

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午前1時15分のレーダー画像。午後9時25分に比べ北西側に発達した帯状の雨雲、いわゆる線状降水帯が確認できます。広島市北部地域で大規模な災害が発生するかもしれないと予測できたのはこの時ではないでしょうか。もう多くの人が眠りに就いている時間です。

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午前3時。降雨域ほとんど変わらず降水帯に沿って土石流が相次いで発生しました。避難勧告が発表されたのは午前4時過ぎです。

午前3時50分までの1時間に、広島県が広島市安佐北区に設置した雨量計で130mmの猛烈な雨を観測。安佐北区三入のアメダスでも、午前3時までの時間に80mm、午前4時までに101mmの猛烈な雨を観測しました。

こうして時間を追ってみると今回の豪雨がいかに短い時間で推移して発生したのかがわかると思います。気象台の情報は予測というより既に起きている現象について情報を出している状態になっていますし、避難勧告は災害が起きた後に発表される形になってしまいました。

広島県はいつ大雨になってもおかしくない状況で、前夜に広島市中心部に降った豪雨はその後の広島市北部の豪雨の予兆と捉えることもできますが、まさかここまで被害が出るほどの記録的な豪雨になるとはこの段階では予測できなかったというのが結果から見えた現実と言えるでしょう。

バックビルディング現象 予想しづらくたちの悪い雨雲

報道でも繰り返し説明されていますが、今回の豪雨の原因となったのは日本海に停滞していた前線と太平洋高気圧の位置関係です。

天気図
豪雨が発生した20日午前3時の天気図です。地上付近では高気圧の縁を回る温かく湿った南風が四国と九州の間の豊後水道を通って流れ込み、広島県と山口県の県境付近で山地にぶつかって積乱雲を発生させました。一方、上空では前線に沿うように南西の風が流れていました。発生した積乱雲は上空の風に流されて風下である広島市北部付近に次々と移動、地上と上空の風の位置関係が変わらなかったため積乱雲がかかり続けることになり記録的な豪雨になりました。この2つの気流の合わせ技で今回の豪雨が引き起こされたのです。

このように、風下に次々と積乱雲が生まれて一列に並ぶ現状をバックビルディング現象と呼びますが、レーダー画像を見ているとさながら煙突から煙が出て風でなびいているように見えます。

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どうでしょうか。バックビルディング現象はその大まかなメカニズムは解っていても、いつどこで発生するかは予測が困難なことが特徴です。レーダー画像をみれば、通常の雨雲、例えば前線に直接伴って発生する雨雲などであれば、西から発達した雨雲が近づいているのでもうすぐ激しい雨になるだろうと予測ができます。しかし、バックビルディングの場合イメージとしては、風上に突如として雨雲を排出する工場が出来て風下に豪雨をもたらす…そんな恐ろしさがあります。

極めて局地的な豪雨

先ほどの煙突を合成したレーダー画像を見ても解ると思いますが、雨雲の幅は10kmから20km程度と極めて局地的です。同じ広島市に住んでいる人でも雷は聞こえたが雨はそうでもなかったという人も多くいました。

実際にアメダスの観測データを見ても19日夜の豪雨では午後10時までの1時間に広島市中区で41mmの激しい雨を観測しているのに対して広島市北部の三入では3.5mmの雨しか降っていません。一方、翌日20日未明からの豪雨では午前3時までの1時間に広島市三入で80mm、午前4時までの1時間に101mm、午前4時までの3時間に200mmを超える記録的な豪雨になっていますが、広島市中区では午前4時までの3時間で10.5mmの雨しか降っていません。

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アメダスの観測データを地図形式で見ても三入の雨量が突出して多く、その他の地点ではさほど降水を観測していません。このことからも今回の豪雨がどれほど局地的だったかがわかると思います。消防局の担当者も豪雨が局地的で全体のバランスを考えて避難勧告を出すか迷ったと話されていました。

甚大な被害は、雨量 時間 地質 地形の悪条件が揃って起こされた

今回の豪雨災害は記録的な雨量に加え、未明から明け方という人々が寝静まった時間に発生したことや、広島県の半分を覆う花崗岩が風化してできた「まさ土」と呼ばれるもろい地質、そして、急斜面の沢筋や過去の土石流が堆積してできた扇状地を開発して宅地化していたことなど複数の要因が挙げられています。

熊谷に引っ越して改めて実感しているのですが、確かに広島は平地が狭いです。今回は広島市北部でしたがあのような地形に宅地が造成されている景色は広島県ならどこでも見られます。私がいる廿日市市の実家ももともとは山だった場所です。幸い実家の周囲に崖や川はないですが周辺を見渡せば、標高100m付近まで宅地化されその背後には山が迫っています。今回の豪雨と比較されている15年前の豪雨災害では親戚の家が被害に会いました。広島県の土砂災害危険箇所は全国最多であると報道されています。でも、ここでそんなに土砂災害が多いかなと感じた広島県民も多いのではいでしょうか。

土砂災害危険箇所は全国最多でも降水量は多くない

広島県は降水量が少なく穏やかな瀬戸内海気候に分類されます。台風が来ても四国に遮られてそれほど風雨が強くないことも多いですし、冬の雪も日本海の雪雲は中国山地に阻まれて人口が集中する広島県南部にはあまり流れ込みません。周辺の県に警報が発表されていても広島県には出されないことも多くTwitterなどでネタにされるほどです。しかし、普段雨が多くないからこそ、ひとたび大雨になると被害が大きくなりやすいということがいえると思います。

今回の豪雨は予報の隙を突いて突然局地的に襲い、土砂災害警戒情報が出た2時間後には土石流が家々を飲み込んしまいました。避難勧告が土石流発生に間に合わなかったことを指摘する声もありますが、土石流は現状の防災システムを超える早さで起こってしまったのではないかと思います。たとえ1時間前に出せたとしても避難完了まで間に合ったでしょうか。時間は深夜、外は豪雨で既に危険な状態でした。最終的には、一人ひとりが防災意識を高めてハザードマップなどを活用して自分の住んでいる地域がどのような危険をはらんでいるかを理解し、いざとなったら避難勧告が出ていなくても土砂災害警戒情報を目安に5感を研ぎ澄まして異常な音や臭いなど前兆現象を察知して身を守るしかないのかなと感じた次第です。

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