英語できなくても大丈夫?武者修行プログラム体験談

英語できなくても大丈夫?武者修行プログラム体験談

この記事は前回の記事、「普通の大学生が海外ビジネス武者修行プログラムに参加してみた」の続きです。

英語が全くできなくても本当に大丈夫か?

まずは、この問題ですね。大丈夫です。と言いたいところですが、現実は少し厳しいです。店舗のマネージャーやスタッフは日本語を話せません。お客様はベトナムに観光に来ている欧米人なので、当然日本語はわかりません。企画をすすめる上で必須の売上や財務に関わる資料も英語で配布されます。中間発表は日本語禁止です。プレゼンもフィードバックも諸注意も、その日はすべて英語で行われます。そんな中、マネージャーから、お店なにが必要で何が足りないのか情報を聞き出し、観光客の欧米人に果敢にインタビューしてなにが求められているのかを探らなくてはいけません。

私は、最初の数日、あまり積極的にインタビューに行かなかったため、「何しに来たのか」「日本に帰ったほうがいいんじゃないか」と言われ、シリアスな中間プレゼンの場で、英語ができないことの恥ずかしさにより、ついヘラヘラしながら喋ってしまい、こっぴどく叱られました。叱られるのも英語で。

英語ができるのとできないのでは、得られる情報量、学びの吸収量が違います。ですから、英語は最低限できたほうが絶対にいいです。それでも、英語ができない人は行くなとは言いません。できなくても、できないなりに必死に喰らいつけば、得られる物はあるはずですし、周りの見方も変わるはずです。そして、人間としても成長して帰国し、きっと英語を勉強し始めるでしょう。物凄い、英語を勉強して喋れるようになりたい!という気持ちが掻き立てられます。ただし、英語ができないのであれば、相当の覚悟を持って行って下さい。それだけは伝えておきます。

武者修行プログラムそのものがビジネスである。

私が武者修行に参加して感じたのが、武者修行プログラムそのものが一つのビジネスモデルだということです。プログラム参加者は実際に3人から4人のチームで実在する店舗に派遣されるわけですが、この店舗は旅武者が運営しています。だから私たちが考えたことをなんでもやらせてもらえます。現に、和也さんから、法に触れること、お店を壊すこと以外なんでもやっていいと伝えられます。本当に自分たちでゼロから考えた企画を実行できる。ただの職業体験としてもインターンとは、まるで性格が違うのです。そして、最終プレゼンで認められれば、新商品なり企画なりを正規のサービスとして、残すことができます。

中間プレゼンはとてもシリアスは雰囲気の中行われました。和也さんと現地法人の社長の2人が席に座っていましたが、笑顔はありませんでした。そして、各チームが徹夜で作ってきたプレゼンに徹底的な指摘が入ります。「根拠がない」「ロジカルでない」と。これを受けて、皆奮い立たせられ、残りの期間で何ができるのか必死に考えるわけです。これまでの3倍速くらいで行動するようになります。

一方、最終プレゼンは、BGMが掛かる中、ファシリテーターの皆さんに拍手で迎い入れられてスタートしました。プレゼンも終始和やかに進められ、時折笑いも巻き起こりました。中間プレゼンとは対照的です。ファシリテーター全員が、武者修行プログラムの集大成であり最終プレゼンを、最高の場にしようとしてくれている思いを感じました。

最終プレゼンの成果が良かった とうこともあるかもしれませんが、武者修行プログラムもビジネスです。和也さんは、武者修行プログラム参加者を2年以内に1000人にすると仰っていますので、このプログラムをどんどん広げていかなくてはならないわけです。そのためには、参加者に、プログラムを最高の経験としてFacebookなどで共有してもらい、それを見た参加者の友達が、次のプログラムに参加するといった連鎖が必要です。ビジネスとしては普通のことなのかもしれませんが、このプログラムをより多くの人に経験してもらうため、うまく考えられているなと感服しました。

2週間という意味

2週間で結果を出さないといけないことも重要なキーワードです。この限られた時間で、チームで協力し、ときには衝突しながら企画を進めます。作る新商品のイメージが固まったら、試作品を作るために、市場を駆け回り、値切り交渉をして、必要な食材を買い揃え、タクシーに飛び乗ります。店舗に着いたらキッチンに立って、野菜を切って、炭で火をおこして調理して、「試作品です」と言って、お客さんに食べてもらってフィードバックを貰い、問題点をあぶり出して、次の日また、市場からスタートです。最終的には、継続して販売できる利益を乗せた定価で販売して、効果を検証します。これを2週間ですべて行うのです。毎日動き続けなければいけません。昼間は店舗に居るため、中間プレゼンや最終プレゼンの資料は、夜にホテルで作成します。前日は徹夜になります。何も残さず帰国するわけにはいかない。限られた時間の中で皆が真剣になります。

学ぶのは新商品開発ではなく、チームビルディングとビジネスマインド

ベトナムに到着したら、翌日から新商品企画がスタートしますが、新商品企画のためにベトナムに行くのでありません。新商品開発は与えられたテーマで、学ぶのはチームビルディングとビジネス的な思考、帰国後も自分自身で可能性を切り開き、チャレンジを諦めない姿勢です。朝礼や終礼の時間には、チームビルディングに重点を置いたワークが、多く組まれています。実際に、チームで企画を進めていると、自分自身のプライドが邪魔をして相手の意見を受け入れられなかったり、価値観の違いにぶつかったり、人間の嫌な部分をみせられたり、みられたりで、チームが空中分解しそうになることもあります。人と人との繋がりがビジネスの根源ともいいます。お互いが本気で向き合い、心の底から信頼できるチームになれたとき、本当の学びがあるのだと思います。

そこにいるのは、「海外ビジネス武者修行プログラム」と聞いて集まってくる人達ですから、それぞれ熱い思いを持ってやってきます。ダダなんとなく大学のキャンパスで仲良くなった気の合う仲間とは違った出会いが待っています。こういった人達と一緒になって揉まれながら企画を進めるということにも意味があると思うのです。

そして、普段バイトなどで、なにもしなくてもお客さんが来て商品を買ってくれることに慣れていると、あまり何も感じないかもしれませんが、自分がゼロから作った商品を買って食べてくれて、美味しいからと、2つ目を注文してくれたお客さんがいたりすると、本当に嬉しいものです。自分の自信にも繋がり、次はもっと喜んでもらおうという気持ちにさせられます。本来、ビジネスとは、働くとは、こういうことなのかなと思いました。

就活に役立つか

就活を意識して、武者修行に参加しようという人も多いかと思いますので、一応触れておきます。私はちょうど、就職活動を終えた身ですが、就職活動中は、多くの面接の場でこの経験を話すことになりました。はっきり言ってウケはいいです。なかなか、ベトナムでインターン経験がある人はいないですからね。でも、実際に行っていたのは2週間。この経験を買われて採用されたということはないと思います。それよりも、なぜ行こうと思ったのか。行って何を学び、その経験をどう活かすのかが重要です。このことは、巷の就活本にもよく書かれていますが、どんな経験でも「我が社で働く上でどう活かすのか」です。でも、武者修行はその“問”にうまく結びつけやすい経験が得られるプログラムだと思います。

で、何作ったの

ここまで、長文を描いておいて私が武者修行プログラムで何を作ったのかを書いていませんでしたね。最後にこれを書いて終わろうと思います。

私が担当したのは、「Marimba Bar & Grill」というアルゼンチン料理のお店。日本人の学生が、ベトナムに行って、アルゼンチン料理のお店で新商品開発をするって、もうね、よくわかりませんね。

とにかく、チームで店舗に移動して、マネージャーやお客様にヒアリングを行います。その結果、最も売れているドリンクはビールだけど、フードメニューにおつまみになるものが少ないということがわかりました。しかし、私は、英語が苦手なこともあり、中間プレゼンの準備段階から消極的になり、中間プレゼンでは前述したとおり、散々な結果。もう一度、チームと向き合って話し合うことに。私の行動がかなりチームに負担を掛けていたと気付かされます。そこから、がむしゃらになって、言葉でうまく伝えられないなら、試作品を大量に作って食べてもらおうと、市場に通う日々が始まりました。商品のコンセプトは「グループでシェアできるビールに合うおつまみ」で、決まった商品は「BBQガーリックトースト」です。Bar & GrillなのでGrillを活かして、炭火で焼いてみました。そして、完成した試作品をマネージャーやお客さんに試食してもらい改善を繰り返すのです。

チームの意見を取り入れて、切り方を変えたり、ソースを添えたりして、味だけでなくビジュアルの向上にも努めました。これが、最終効果測定日に焼くスピードが追いつかないくらい飛ぶように売れ、その成果が認められ、商品をお店に残すことができました。本当に嬉しかったのを覚えています。(ただし、ビジネス面では、商品の共食い有無や、どれぐらい客単価を上げたのかといった考察が抜けているとの指摘もありました。)

なお、「Marimba Bar & Grill」は閉店し、新しいお店に生まれ変わるそうです。

P.S. 和也さんとファシリテーターの皆さん、第3タームのみんなには、本当にお世話になりました。この場を借りて感謝申し上げます。