ウユニ塩湖に旅行に行ったらA型肝炎に感染した話
医者「肝機能障害が出てますね。最近海外に行かれましたか?」
私「えーと、1ヶ月くらい前に、ボリビアとニューヨークに・・・」
医者「ボリビア!? A型肝炎かもしれませんんね。血液検査の再検査をしてみましょう。」
新社会人としてデビューした3日目、全身の倦怠感、食欲不振と吐き気に限界を感じて病院を受診したときに、医者が発した言葉です。
これは、これから東南アジアや南米などの発展途上国に旅行を計画している皆さんに読んでほしい記事です。とくに最近は、格安航空券が手軽に入手できるようになったことや、メディアの影響を受けて、マチュ・ピチュやウユニ塩湖など南米諸国を訪れる大学生が増加しているので、ぜひ知っておいてほしいと思います。
原因はボリビアで食べた生野菜か!?
私は、大学の卒業旅行で今年の2月から3月にかけて、3週間ほどボリビアとニューヨークを旅していました。ボリビアに行った目的はウユニ塩湖を見ること!ウユニ塩湖については時間があれば別記事にしたいと思っているのですが、それはもう期待を裏切らない素晴らしい絶景でした。そして、旅行全体を通しても、ボリビア到着直後に高山病になったり、配車アプリ「Uber」のエラーで、ニューヨークから帰国する飛行機に乗り遅れて、帰国が翌日になったりというトラブルはあったものの、旅を満喫して無事帰国していました。
異変が起きたのは、帰国してから約1ヶ月。就職のため、引っ越してきて、慌ただしく部屋の片付けをしているときでした。突然の発熱です。体がものすごく熱っぽいのです。引っ越しのバタバタで体温計を何処かにやってしまい、体温を測れていないのですが、明らかに熱があったと思います。ただ、翌日にはすぐ下がりました。(←測れてないので感覚です。)このときは、卒業式や引っ越しと忙しくしていたので疲れが出たのだろう と軽く受け止めていました。
二度目の異変は、熱が出てから6日後。それまでも、地下鉄の階段で地上に上がるだけで、登山をしたように異様にだるいとか、体の節々が痛いとかいった症状があったのですが、ついに、この日は全く食欲がなくなり、嘔吐。その翌日も、むかつきが取れず、流石にこれは何かおかしいと思い病院を受診しました。冒頭の会話です。
血液検査の再検査は結果が出るのに数日かかるとのことで、帰宅。すると翌朝、病院から電話がかかってきて、「昨日の血液検査の結果が異常だから大きい病院を紹介する。すぐに来てほしい」とのことでした。病院に行くと医者に、開業医レベルで点滴して済む数値ではないと言われ、大きい病院で精密検査を受けることになったのです。
精密検査の結果、病名はA型肝炎。緊急入院することになりました。
A型肝炎とは
A型肝炎について、厚生労働省のHPによると、
感染経路
糞便から排泄されたウイルスが人の手を介して、水や氷、野菜や果物、魚介類を経て口に入ることで感染します。過去には、貝類による集団感染もありました。性交渉時に感染することもあります。症状
ウイルスに感染し、2~7週間の潜伏期間の後に、急な発熱、全身のだるさ、食欲不振、吐き気や嘔吐が見られ、数日後には黄疸(皮膚や目の白い部分が黄色くなること)が現れます。潜伏期間が長いので、感染機会は前回の旅行時であったということもあります。出典:厚生労働省検疫所FORTHホームページ(http://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name01.html/div)
とのことです。
先進国を除く世界中で感染リスクがあり、とくに衛生状態が悪い発展途上国でリスクが高まります。南米の途上国であるボリビアは感染リスクの高い国に含まれます。発展途上国では、A型肝炎以外の感染症にも注意が必要で、もちろんそのことは私も認識していました。だから、飲用水は当然、ペットボトルのミネラルウォーター。魚介類も口にせず、肉も中まで火が通っているか注意して食べていたのですが、、、おそらく原因は生野菜です。
ボリビアの名物であるリャマ肉のお店で食べたサラダ。他にも、タコスやハンバーガーには当然のように、生野菜が入っていました。そもそも、生野菜に気をつけろと言われても、全く生野菜を食べずに旅行することは難しいです。不可能ではないにしても、食べれるものがかなり制限されます。人生初めての海外でベトナムに行ったとき、フォーの中にはいっていた“もやし”が生だったときの衝撃は今でも忘れません。
ちなみに、リャマ肉のお店のサラダは、一緒に行った友達も食べているのですが、感染しておらず。どの食べ物がウイルスに汚染されていのかわかりません。
ただ、ボリビアで食べた、どれかの食べ物にウイルスが含まれていて感染したことは事実です。潜伏期間の平均は4週間であり、ピッタリ当てはまります。
治療と入院生活
さて、このA型肝炎という病気は、多くの場合入院治療となります。しかし、特別な治療法はなく、対処療法を行い安静を保つことが重要になります。具体的には、強力ミノファーゲンシー(略して強ミノ)という破壊された肝細胞を保護する点滴を毎日行い、ひたすら寝てるだけです。そして、血液検査をして、ALT(GPT)という肝細胞が破壊されると上昇する値の推移を見守ります。朝、7時前に看護師さんがきて、「おはようござます!採血します。」といって ブスッ と刺されて血を抜かれます。
ちなみに、このALT(GPT)という値、平常値が6〜30に対して、入院した日、私の数値は3000を超えていました。通常の100倍ッ 別の肝臓の機能を示す数値であるビリルビン値も高く、医者に少し黄疸が出てると言われました。とはいっても、入院して3日もすれば、だいぶ体調が回復して食欲も戻ってきました。しかし、数値の方はそう簡単に下がるものではありません。ALT(GPT)の血中半減期は40〜50時間と言われ、初めのうちはどんどん下がるものの、徐々に下がるペースが遅くなってきます。最初は1週間くらいで退院できるんじゃね?とか思っていましたが、そうもいかず。こうなると、入院生活はとにかく「暇」の一言。家族に持ってきてもらった本も読み終え、Amazonで本を買って自分の病室宛に注文したり、同じ部屋に入院していた爺さんと娘さんの介護費用をめぐる喧嘩を聞いたりしていました。
入院食は、肝臓食と呼ばれる特別なメニューが毎日3食出されます。
ある日の夕食
入院食というと、あまり美味しくないイメージでしたが、味は薄めながらも結構美味しい。あまり制限は厳しくないみたいでした。
社会人デビュー直後というタイミング
A型肝炎という病気は、慢性化することなくほぼ100%回復して、後遺症もなく、強力な免疫ができて生涯を通じて二度とA型肝炎に感染することはなくなります。しかし、稀に(0.5%)劇症肝炎を発症し、この場合は命に関わります。したがって、通常は恐怖に怯えるような病気ではありません。
そうはいっても、2週間〜3週間の入院生活を強いられるのは大きな損失です。特に私のように、新入社員として入社してすぐ、いきなり入院というのはあまりにも辛いです。しかし、これはある意味必然で、卒業旅行でA型肝炎に感染した場合、潜伏期間を経て発症するにのは確実に入社直後になってしまいます。
A型肝炎はワクチン接種によって、ほぼ100%感染リスクを回避できます。日本衛生検疫協会の旅行先別予防接種チャートでは、A型肝炎ワクチンについて、途上国に一カ月以上の長期滞在を行う方に推奨、短期滞在の場合でも、局所的な発生があるなどリスクがある場合には検討するべきとされています。しかし、少し古いですが2007年に行われた、途上国への日本人旅行者を対象とした調査※1において、A型肝炎ワクチンの摂取率はわずか2%だったそうです。
問題となるのは費用です。ワクチン接種の費用は、1回 8,000円くらいで、これを2回〜3回接種しなければなりません。これは結構な負担になります。しかし、ワクチンを1回接種後の1か月以内に、ほぼ100%の人でウイルスに対する抗体価が感染を防ぐレベルになる※2といわれています。これから、途上国を含む旅行を計画している人は、もし感染したらどうなるかということを考えて、予防接種を受け、旅行を安心して楽しんできてほしいと思います。
※1 出典 47NEWS 渡航者はワクチンで備えを海外に潜む感染症の危険低い日本人の接種率
https://www.47news.jp/281464.html
※2 出典 WHO Fact sheet N°328 Hepatitis A, Updated July 2016
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs328/en/
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