第48回 気象予報士試験 実技 <解答&反省会> 実技2問1

第48回 気象予報士試験 実技 <解答&反省会> 実技2問1

実技2問1

問1は、典型的な天気図穴埋め問題です。落ち着いて確実にGETしていきましょう。問題文に、[1][8]は10倍数、[2]は十種雲形、[6]は8方位、[2][3][4][5][6][9]は、漢字で答え、[11]は高「高」または「低」のいずれかで答えよ。と指示があるこので、この指示を守るようにします。

問題文(1)
 図1では、中国⼤陸から⽇本の東海上にかけて、北緯[1]°線に沿ってのびる帯状の雲域がみられる。この雲域は前線に対応しており、南⻄諸島付近には発達した[2]がみられる。図2においてこの前線は、東経140°より⻄側が[3]前線、東側が[4]前線として解析されている。前線近傍の海域には[5]警報が発表されている。
図1で北海道にかかっている雲域は低気圧に伴うもので、主に低気圧中⼼の[6]側に広がっている。図3によれば、この低気圧に関連する300hPa ⾯の強⾵軸が東経140°線と交差する地点の緯度は北緯[7]°であり、その地点の⾵速は[8]ノットに達している。この低気圧は、アムール川下流にある寒冷渦の[9]象限に存在している。図4(上)によれば、この寒冷渦は500hPa ⾯で[10]℃の寒気を伴っている。図3で寒冷渦の中⼼域が相対的に⾼温になっているのは、この付近の圏界⾯の⾼度が300hPa ⾯より[11]いことに対応している。


[1]前線に伴う帯状の雲域は北緯[30]°線に沿っています。
[2」南西諸島の雲域は、赤外画像でも可視画像でも真っ白で、発達した[積乱雲]に間違いないですね。

[3][4]前線は東経140°を境に、西側が[停滞前線]東側が[寒冷前線]になっています。
[5]前線付近の海域に発表されている警報は[海上濃霧]警報。
[6]北海道にある雲域は、低気圧中心の[北東側]に広がっています。

[7][8]300hPa高層天気図に記載されている、等風速線を参考に強風軸を描いて、東経140°線と交差する地点の緯度を答えると、北緯[37]°くらいです。その地点の風速を読み取ると[140]ノットとなっています。

[9]寒冷渦について聞かれたら取り敢えず、500hPa天気図を見ます。アムール川下流にある寒冷渦を確認できました。北海道付近の低気圧が、この寒冷渦の、どこの象限にあるかと問われれば[南東]象限です。寒冷渦の南東象限は、大気が不安定になりやすく、雷雨や突風が発生しやすいので、この領域に着眼した問題が過去にも多く出題されています。
[10]この寒冷渦の中心付近で-40.5℃の気温を観測しているのでこれを答えます。[-40]℃でも、[-41]℃でも正解になっています。

私は、これまでの過去問で寒冷渦や低気圧に伴う寒気について問われた場合、観測値で答えるのではなく、“-36℃の等温線で囲まれた寒気域”といったように、等温線の値を示して答えることが多かったので、等温線の値で書いてしまいました。

[11]寒冷渦付近の圏界面高度が300hPa面より“低い”のか“高い”のか。寒冷渦の中心付近の温度が周囲より高いということは、圏界面高度はそれよりも下にある。つまり、300hPa面より[低く]なっています。寒冷渦周辺では、圏界面高度が低く垂れ下がっているということを、知識として知っておかなかればなりません。

問題文(2)
気象衛星画像を⽤いて、次の[1]〜[4]に該当する雲域をA〜Eから選び、記号で答えよ。
ただし、複数の雲域が該当する場合はそのすべてを答え、該当する雲域がない場合は「なし」と答えよ。
[1]上層雲 [2]層雲・霧 [3]積雲 [4]積乱雲

衛星画像から雲の種類は判断する問題ですが、複数の雲域が該当する場合があるため消去法が使えず、少し難易度が高いかもしれません。

解答しやすい雲域から答えていきましょう。
まずは[E]。天気図より寒冷前線に伴う雲域であり、赤外画像、可視画像とも明るく写っていることから[積乱雲]に間違いありません。続いて、[B]。赤外画像で暗灰色で見えづらく、可視画像で一様に滑らかな雲域となっている。これは[層雲・霧]の特徴です。そして、[D]赤外画像で暗灰色なので下層雲とみて間違いなさそうです。可視画像では細かい雲がいくつも並んでいるように見えます。これは[積雲]の特徴。ここから少し難易度が上がって[C]。赤外画像が明るく、可視画像で暗いので上層雲の可能性が高いです。朝鮮半島から東に向かって箒で掃いたような特徴的な形をしています。これはおそらく、朝鮮半島の山岳の影響を受けた、地形性巻雲と思われます。地形性巻雲については、こちらの記事で詳しく解説してありました→「てんコロ.の気象予報士講座/山岳波」したがって[上層雲]に当てはまります。最後に残るは[A]。この雲域も、赤外画像で明るく、可視画像で暗くなっています。分布のどことなく、上空のジェット気流が関与しているように見えませんか?したがって[上層雲]です。

問題文(3)[1]
図2の地上天気図に表示された前線について、その立体構造と周辺の気象状態に関する以下の問いに答えよ。
[1]図4に基づき、この前線に対応する850hPa面の等温線の値を答えよ。


地上天気図を参考に前線が描かれている付近の等温線を850hPa面で探すと[12]℃と読み取れます。

問題文(3)[2]
図4に基づき、この前線付近とその南北における700hPa面の鉛直流分布の特徴を30字程度で述べよ。


前線付近の上昇流域に着色してみました。前線付近とその南側で上昇流域になっていて、北側で下降流域になっています。この状況を30字で表現します。

私はこう書きました。
前線付近とその南側で上昇流域となっていて、北側で下降流域となっている。(35字)
そのままです。

解答例は、
前線付近とその南側に上昇流、北側に下降流がひろがっている。(29字)
でした。

問題文(3)[3]
図5では、前線に対応する850hPa ⾯の等相当温位線の集中帯がみられ,その北側に複数の⾼気圧性循環が予想されている。⽐較的明瞭な⼆か所の⾼気圧性循環中⼼の位置を緯度・経度1°刻みで答えよ。

なんだこの問題は!?と思いましたが、取り敢えず前線の北側とあるので、北側を眺めてみました。

よく見ると、確かに2箇所風向が周囲と比べて乱れていて、発散しているように見える箇所があります。ここの緯度経度を答えます。

西側が、北緯[34]° 東経[128]°
東側が、北緯[34]° 東経[145]°

私は東側の方の位置が少しズレて、北緯34°東経144°と答えてしまいました。

問題文(3)[4]
[2]と[3]を踏まえ,図4 と図5 に基づいて,前線付近とその南北における850hPa ⾯
の湿度の⽔平分布の特徴を35字程度で述べよ。

850hPa面の湿度の分布の特徴について述べます。
図4の850hPa気温を見ると、前線付近の南北の温度差は小さく、温度傾度は大きくありませんが、相当温位線は集中しているため、相当温位傾度は大きいということがわかります。つまり、南側は湿潤で北側は乾燥しているということです。

以上を踏まえ得て、私はこう書きました。
温度傾度は大きくないが、相当温位傾度が大きく、前線の南側で湿っていて北側で乾燥している。(44字)

解答例は、
前線の南側は湿潤、北側は乾燥しており、前線付近で湿度の勾配が大きい。(34字)
でした。

うーん、言いたいことは同じつもりなのですが、ちゃんと、“前線付近で湿度の勾配が大きい”と明言したほうが良かったですね。根拠となる、“温度傾度は小さいが、相当温位傾度は大きい”ということには、特に触れなくてもいいみたいです。

問題文(4)[1]
図2では、北海道付近の低気圧に伴う前線は描画されていない。この前線について、以下の問いに答えよ。
[1]地上におけるこの前線を、解答図の枠線内について、記号を⽤いて記⼊せよ。

私は、この前線解析の問題で盛大にやらかしてしまいましたが、まずは正しい解答からみていきましょう。

まず、問1で求めたように、上空の強風軸が北緯37°付近を通っていおり、低気圧は強風軸の北側に位置しているので、この低気圧は閉塞していると考えることができます。最初に解析しやすい寒冷前線から描写していきます。


寒冷前線は、850hPa面の相当温位線集中帯や、地上のトラフを参考に、閉塞点が強風軸上にあることを意識しながら描写します。これに合わせて、低気圧中心から閉塞点に向って閉塞前線を、その先に温暖前線を、相当温位線との対応を考えながら描写します。

ここで間違いやすい点が一つ。地上天気図に宮城から千葉にかけて気圧の谷がありますが、ここに温暖前線を引いてはいけません。気象予報士の先生にお聞きしたところ、この気圧の谷は脊梁山脈の影響による地形性の気圧の谷だそうです。脊梁山脈の周辺ではよく発生しているようです。気象の世界は奥が深いですね。

私の解答はというと、、、

これは酷い。寒冷前線の位置は概ね当たっていますが、温暖前線が全く違います。なぜこういう解答になってしまったかというと、右の図のような教科書的な閉塞した前線のイメージが邪魔をしてしまいました。気圧の谷や等温線との対応が上手くいかないと思いつつも、無理やり、右上に閉塞前線を引こうとした結果こうなってしまいました。まだ修行が足りないようです。。。必ずとも前線の形が教科書的になるとは限りませんし、実際に日々の天気図を眺めていると、このような前線もよく目にします。南南東に向かって閉塞前線と、温暖前線を引いたほうが、相当温位線との対応がよく、しっくりきますね。

また、この問題をややこしくしているのが、相当温位図が12時間予想図であること。地上天気図は実況図なの時刻が違うように思えますが、地上天気図が、4月9日9時(00UTC)なのに対して、相当温位図の初期時刻が4月8日21時(12UTC)となっているので、天気図と相当温位図は同じ時刻のものとして扱えるということです。私はこれに気づくまで、何度もページを行ったり来たりして時間をロスしてしまいました。

問題文(4)[2]
図4と図5に基づき、この前線の東経135°〜 140°の部分に対応する850hPa ⾯の等温線の値と等相当温位線の値を答えよ。

東経135°~140°の部分なので、寒冷前線に対応する、等温線と相当温位線を答えます。

等温線は3℃と迷うかもしれませんが、前線が上層に向かって傾いていることを考慮すると、[]℃のほうが妥当です。相当温位は、相当温位線集中帯の南側の値を答えます。対応してそうなのは[297]Kです。

問題文(4)[3]
[1]の解答と図4(右下)に基づき、この前線の東経130°〜 140°の部分とその南北での700hPa⾯の湿数分布の特徴を、地上の前線との位置関係を明⽰して45字程度で述べよ。


この前線の東経130°〜 140°の部分とあるので、寒冷前線の部分とその南北の湿度分布の特徴を45字で答えます。うーん。前線の北側で湿数が大きく、前線付近は湿数が小さいけど、湿潤域というほどではない。

つかみどころがわからず、私が書いた解答がこちら
前線の北側で湿数が大きく、南側で小さくなっているが、湿数3℃以下の湿潤域にはなっていない。(45字)
何が言いたいのかわからない文章になってしまいました。

解答例は、
地上の前線に沿って相対的に湿数の小さい領域が帯状にのび,その北側と南側で湿数が大きい。(43字)

なるほど、湿数3℃以下の湿潤域ではないが、湿数が周囲に比べて小さい状況を“相対的に小さい領域”と表現すればよかったのですね。また、私の前線解析の位置がズレていたので南側が小さいと書いてしまいましたが、正しく解析すると、湿数が小さい領域(前線付近)のさらに南側は、北側ほど顕著ではないものの、湿数が大きくなっています。問題文に“前線の東経130°〜 140°の部分とその南北での”とあるので、“前線付近で◯◯となっていて、その南で◯◯、北で◯◯となっている”という書き方をすれば良かったです。

第48回 気象予報士試験 実技 実技2問2

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