第47回 気象予報士試験 実技 <解いてみよう> 実技2問2
- 2017.10.05
- 天気 気象予報士
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実技2問2
図2(上) に記入されている500hPa 面のトラフA,B のその後の推移および地上の低気圧との係わりに関する以下の問いに答えよ。
[1]12 時間後にトラフA が5520m の等高度線と交差する位置( 東経(°))として最も適切なものを下の枠A の中から一つ選べ。また、12 時間後にトラフB の渦度最大点に最も近い等高度線の値(m) として最も適切なものを下の枠B の中から一つ選べ。
私の苦手なトラフの解析です。今回は幸いなことに選択肢が用意されているので、消去法で解きました。選択肢がないと、かなり難問だと思います。
トラフAが12時間後に、5520mの等高度線と交差する位置は、東経何度かという問題。選択肢は、138°、144°、154°です。まず、154°に注目。近くに+23×10^(-6)の正渦度極大値がありますが、トラフAは図2より、初期時刻に東経133°付近にありました。154°の場合、12時間で経度20°以上も移動したということになりますが、それはあまりに早すぎます。ここで、選択肢が一つ消えます。
残ったのは、138°と144°。東経138°の付近には+165×10^(-6)の正渦度極大値。東経144°の付近には+43×10^(-6)の正渦度極大値があります。どちらが正解か、非常に悩みますが、138°の場合は、逆に移動が遅すぎるのではないかと思いました。上空のトラフは地上の低気圧は関連していて、どちらも風に流されて移動します。低気圧が寒冷低気圧などで移動速度が遅いのであれば、関連するトラフの移動が遅くても納得できますが。しかし、問題の地上低気圧はは経度6°ほど移動しています。
また、トラフ解析において、渦度=0の線を超えて、負渦度側に線を引くことはあまりしません。もし、東経138°を答えとした場合、高度5520mの等高度線と交わらせるためには、負渦度側にも線を引かないといけなくなります。したがって、144°が最もベターであると思い、これを選択しました。
解答例は[144]°
良かった。
実際はもっと、根拠のある解答の方法があると思いますが、私の力量ではこれが限界でした。
トラフBの解析は、等圧線の曲率が明瞭なのでトラフAに比べて解答しやすいと思います。初期時刻に+153×10^(-6)の大きな正渦度極大値が解析されています。12時間予想図を見ると、日本海に+169×10^(-6)の正渦度極大値があり、等高度線が大きな曲率を持って、南側に凸状になり、深いトラフとして解析されています。これが12時間後のトラフBです。したがって、トラフBの渦度最大点+169×10^(-6)に最も近い等高度線の値は、[5280]mとなります。
この問題は[1]のトラフAの解析を間違えると芋づる式に間違えてしまう、恐ろしい問題です。[1]が難問だっただけに正答率は低いのではないかと思います。
12時間後のトラフの位置は144°なので、トラフは低気圧を追い越して、東側へ移動しています。
私の解答
トラフAの位置関係の変化
[低気圧の西側からから東側に移動する。](15字)
解答例
トラフAの位置関係の変化
[トラフAは低気圧を追い越す。](14字)
まあ、はい。要するにそういうことです。
低気圧の発達への寄与については、「初期時刻の時点では、発達に寄与していたが、12時間後には寄与しなくなる」というのが正解だと思うのですが、、、「有」「無」の2択で問われたら、問題の流れからして「無」ですね。
発達への寄与:[無]
まずは、初めの12時間について解答していきます。
初期時刻に朝鮮半島の北側にあったトラフBが東に進んで、日本海の低気圧に接近していますね。低気圧が発達することを示唆しています。この様子を20字で表現します。
私の解答
初期時刻~12時間後
トラフBの位置の変化
[低気圧の西側から接近する。](13字)
指定された字数の20字より少ないですが、これ以上書くことがありませんでした。
解答例は
初期時刻~12時間後
トラフBの位置の変化
[トラフBは低気圧の西側から接近する。](18字)
なんじゃそりゃ。低気圧Bの変化は?と問われて、わざわざ、“トラフBは”と書かなくても“トラフB”について述べていることは自明であろう。
発達への寄与は、トラフが西側から接近するのだから、[有]。
その後の12時間について、
まずは、間違った私の解答から
12時間後~24時間後
トラフBの位置関係の変化
[低気圧とほぼ同じ位置に移動する。](15字)
実際はどうだったのか天気図で確認してみます。
私は、秋田付近にあるLマークの付近からトラフを解析してしまったのですが、等高度線の形状などから解析し直すと、24時間後には秋田沖にある日本海の低気圧をトラフBが完全に追い越していました。天気図をパット見て、早合点するとこういうミスをしてしまいます。
解答例は
12時間後~24時間後
トラフBの位置の変化
[トラフB は低気圧を追い越す。](14字)
でした。
トラフが低気圧を追い越すので、当然発達への寄与の寄与は[無]になります。この問題は先の論述の内容が間違っている場合でも「無」と解答していたら点数貰えるのかな・・・
に答えよ。[1]低気圧の発達が最も急速に進む時間帯を、次のア〜エから一つ選び記号で答えよ。また、その時間帯における12時間の中心気圧降下量を答えよ。
ウ:31 日9 時〜31 日21 時 エ:31 日21 時〜01 日9 時
それぞれの予想時間における、低気圧の中心気圧を求めて、計算して導き出します。
なお、初期時刻に四国沖にある低気圧は、この問題で着目している48時間後の北海道の東海上に予想されている低気圧とは別のものです。12時間後に、低気圧が2つ予想されていますが、北側の「低気圧L2」が着目している低気圧で、「低気圧L1」が初期時刻に四国沖にあった低気圧です。では、着目している低気圧が初期時刻にどこにあったかというと、初期時刻にはまだ発生していませんでした。厳密にいうと、緑の丸の辺りにある温暖前線上にキンクとして解析されています。ただし、問題自体はこのことに留意しなくても、正解を導くことができます。
それぞれ計算すると、まだ低気圧が存在していない「ア」の時間帯を除いて、
イ:30日21時~31日9時
1008-992=16hPa
ウ:30日9時~31日21時
992-984=8hPa
エ:31日21時~1日9時
984-984=0hPa
となるので、最も急速に発達した時間帯は[イ]となります。中心気圧降下量は[16]hPaです。
「トラフA」は12時間後には、低気圧の東側にあるので、関連するトラフは「トラフB」で間違いないですね。低気圧が発達する理由は、この「トラフBが深まりながら低気圧の西側に接近する」からなのですが、渦度と温度移流にも言及して答えなくてはなりません。渦度の概念が難しいですが、低気圧の発達とくれば、キーワードは「正の渦度移流」です。
500hPaの12時間予想図を見ると、低気圧はトラフの東側にあり、大きな渦度から小さな渦度に向かって風が吹いているため、低気圧周辺には正の渦度移流があるといえます。正の渦度移流は上昇流を強めて、低気圧の発達に寄与します。
850hPa天気図では、12時間後から24時間後にかけて、低気圧の前面で強い暖気移流、後面で強い寒気移流となっているのが明らかです。
私はこのように解答してみました。
[トラフBが急速に深まりながら接近し、正の渦度移流が大きく、低気圧前面の暖気移流と後面の寒気移流が大きくなる。](54字)
解答例は
[低気圧がトラフB の前面の強い正渦度移流域に入り、東側に強い暖気移流、西側に寒気移流を伴うと予想されるため。](53字)
だいたい同じようなことを言っている気がしますがどうでしょう。
「この低気圧が閉塞していると判断できる理由を、500hPa強風軸と関連付けて答えよ。」という問題です。温帯低気圧は、発達段階では強風軸の南側(暖気側)にあるが、閉塞過程に入ると強風軸の北側(寒気側)に入るということ知っていれば、難しくありません。
正渦度域と負渦度域の境目、渦度0線は強風軸に対応しているので、そこを強風軸として線を引くと、地上の低気圧は北側(寒気側)にあります。
私の解答
[低気圧の中心が500hPaの強風軸の寒気側に位置しているため。](30字)
今回は低気圧の位置が強風軸の北側というよに、西側に近かったため、あえて寒気側と表現してみました。
解答例は
[地上の低気圧中心が500hPa 面の強風軸の北側に入る。](27字)
でした。北側で良かったんですね。同じような状況を問われていても、過去問の解答例で、“寒気側”や“高緯度側”といった表現をしていたこともありました。
強風軸に最も近い等高度線を答えます。
5520mと5460mで迷いますが、低気圧付近を細かく見ると、5460mの方が近いかなと思います。解答例も[5460]mとなっていました。
図8の初期時刻が30日9時なので読み取る図は、9時間後のT=9です。等温線は1℃刻み、解答も1℃刻みなので、間違えないように読み取るだけです。
L1:[7]℃ L2:[3]℃
図1の実況地上天気図、図4の12時間予想地上天気図、それを補完する、図8の3,4,9時間地上気圧予想図。見る図が多くて大変です。
まずは12時間後の低気圧L1とL2の位置と勢力を確認しておきます。
L1とL2の勢力はどちらも、1008hPa。L1は千葉県付近、L2は三陸沖にあります。
まずはL1の低気圧を、図8の地上気圧予想図を用いて、時間を追いながら見ていきます。
9時間後は伊豆諸島付近にあり1008hPa、6時間後は東海道沖にあり1010hPa、3時間後は紀伊半島の沖にあり1014hPaと読み取れます。では、初期時刻にはどこにあったかというと、
四国沖にある1014hPaの低気圧がL1になります。
したがって、低気圧は初期時刻から12時間後にかけて、東北東に進みながら発達しています。
私の解答
[初期時刻い四国沖にあり、東北東に進みながら発達する。](25字)
解答例は
[初期時刻に四国沖にある低気圧が、深まりながら東北東に進む。](29字)
“深まりながら”と“発達”は、同じ意味と捉えて大丈夫そうですが、なぜ、“発達”ではなく、“深まりながら”と表現したのだろうか。。。
続いて、L2の低気圧。こっちは難易度高めです。
9時間後は三陸沖で1010hPa、6時間後も三陸沖で1012hPa。ここまでは良いのですが、3時間後で迷います。私は、愛知県付近にある低気圧がL2だと思っていましたが違っていました。低気圧のマークがありませんが、伊豆諸島にある、気圧の谷がL2です。この気圧の谷が発達して低気圧L2になったということです。
3時間後でも、まだ低気圧として解析されていないので、初期時刻の天気図にもL2の低気圧は存在しません。ただし、低気圧が発生する予兆が現れています。その予兆とは、北側に盛り上がり、歪な形をした温暖前線です。
私の解答
[初期時刻にある気圧の谷が発達して低気圧になったもので、東北東に進むながら発達する。](41字)
解答例
[初期時刻に伊豆諸島にある気圧の谷が低気圧となり、急速に発達しながら北北東へ進む。](40字)
私の解答は、3時間後に愛知県付近にある小さな低気圧がL2の低気圧だと思って解答しているので、進む方角が間違っていて、解答例のように“伊豆諸島にある気圧の谷”とは書けていません。これは減点ですね。
じょう乱の兆候となる気温分布の特徴といえば、「等温線の北への盛り上がり」。鉛直流分布の特徴といえば「上昇流」でしょう。状況を図2の850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図で確認してみます。
まず、850hPaの等温線に注目すると、見事に2箇所、等温線が北に盛り上がって凸状となっています。海域名で答えると、四国沖の盛り上がりが低気圧L1、東海道沖の盛り上がりが低気圧L2に対応しています。
私の解答
850hPa気温分布
[四国沖と東海道沖で等温線が北に凸状となっている。](23字)
解答例
850hPa気温分布
[四国沖と東海沖で等温線が北に凸になっている。](22字)
全く同じと言っていいでしょう。
次は、700hPaの鉛直流に注目。
等温線が北に凸状となっている部分に、-54hPa/hと-80hPa/hの上昇流の極大値が解析されています。
私の解答
700hPa鉛直流分布
[四国沖と東海道沖で上昇流が極大となっている。](21字)
解答例
700hPa鉛直流
[四国沖と伊豆諸島に上昇流の極大がある。](19字)
東海道沖ではなく伊豆諸島だと!?
厳密に言えば、伊豆諸島。。。これで減点されたらかなり厳しい。
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